新しいニーズは、作れません ――ニーズは「創造」するものではなく「発見」するものです

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新しいニーズは、作れません ――ニーズは「創造」するものではなく「発見」するものです

PodcastとYoutubeで、リスナーの方から来た質問にお答えする形でそれぞれ台本なしの経営トークを展開していますが、こちらでは並行して連携をしたコラムをまとめます。

フリートークでわかりにくいことなど文字にまとめて読みやすいようにしていますのでこちらも経営の参考にしてください。

「私は20代の会社員です。
いつか起業をしようと考えています。そして日々、どうやったら新しい価値を作れるのか、ニーズを作れるのか日々模索しながら働いています。今までコンサルティングの現場で新たなニーズの創造があった例など教えてください。よろしくお願いします。」

起業を志す方の、真っすぐなご質問です。

新しい価値を生み出したいという気持ちは、とても良いものだと思います。

ですが、先に結論を申し上げます。

ニーズは、作れません。

ニーズは「作る」ものではなく、「発見する」ものです

マーケティングの世界では、ニーズは作れないと言われています。

ニーズとは、創造するものではなく、発見するものだからです。

新しい商品やサービスが世に出たとき、多くの人は「新たなニーズが生まれた」と感じます。

ですが、それは消費者側から見たときの錯覚です。

ニーズそのものは、ずっと前からそこにあります。

それを誰かが見つけ、形にしたにすぎません。

厳しい言い方になりますが、「ニーズを作ろう」と考えている時点で、まだ消費者の視点が抜けきっていないのだと思います。

作ろうとするのではなく、すでにあるものを見つけにいく。

まずは、この前提を持っていただきたいのです。

祇園のお店は、何も新しいものを作っていません

実際に、私たちが支援している現場の例をお話しします。

京都・祇園に、コロナ禍の前から営業している飲食店があります。

このお店は、コロナの時期に売上が落ち込みました。

観光客は来るには来るのですが、以前のようには売れなくなったのです。

そこで行ったのは、新しい商品を作ることではありません。

値段を倍に。最終的には3倍まで上げています。

結果、お客様は10倍以上に増えました。

何が起きたのか。

わざわざ祇園まで来た人は、「いいものを食べた」という気持ちになりたい。

そのニーズを発見したのです。

京都旅行に来て、どこでも食べられるような食事で済ませて帰りたい人はいません。

「いいところに来たな」
「京都に来てよかったな」

と思いたいのです。

商品自体は、もともと良いものでした。

それを1,500円から3,000円にすれば、当然利益が出ます。

その利益で、アルバイトを一人増やすことができます。

人が増えれば、接客やおもてなしに手をかけられるようになります。

そうなれば、お客様の満足感はさらに上がります。

最初はお店の社長も「値段を上げたら、お客さんが減りますよ」と反対されていました。

ですが、1〜2ヶ月で結果は出ました。

お客様が増え、利益も出る。

そうなると、現場のやる気も自然と上がっていきます。

このお店は、新しいニーズを作ったわけではありません。

もともとあったニーズに、正しく応えただけです。

ニーズの裏側には、いつも「不の感情」があります

ここで、ニーズという言葉を整理しておきます。

ニーズとは、人が必要としていることです。

「速く走りたい」「健康でいたい」

挙げればきりがありません。

ですが、その背景をたどっていくと、そこには必ず不安、不満、不足といった「不」の感情があります。

例えば、塾がそうです。

「いい大学に行けなければ、いい就職ができない」

この不安があるからこそ、塾という商売が成り立っています。 

多くの人が「創造」だと思っているものは、実はこうした不の感情の「発見」なのです。

「速い馬車」と答えた人が、本当に欲しかったもの

有名な話があります。

自動車がなかった時代に、人々に「何が欲しいか」と聞いたら、「もっと速い馬車」と答えただろう、というものです。

フォードの言葉として語り継がれています。

この答えをそのままニーズとして受け取ると、どうなるでしょうか。

馬の数を増やす。
壊れにくく軽い素材で馬車を作る。
餌を変えて、馬をたくましくする。

おそらく、そういう方向に進んでいたはずです。

ですが、人々が本当に求めていたのは、馬車ではありません。

速く、安全に、目的地にたどり着く方法です。

自動車という技術は、確かに革新的で創造的なものでした。

ですが、その根っこにあるニーズは、創造されたものではなく、もともとそこにあったものです。

技術は創造できても、ニーズは発見するしかない。ここを混同しないことが大事です。

「誰もやっていない」は、「誰も欲しくない」かもしれません

起業を考えるとき、「まだ誰もやっていないアイデア」に惹かれる方は多いと思います。

もちろん、それが時代を先取りしたアイデアである可能性もあります。

ですが同時に、誰もやっていないのは、誰も欲しくないからかもしれないという可能性も、冷静に考えておく必要があります。

さらに言えば、本当に新しいものは、形にするのが難しいうえに、大きな企業に真似されたらそこで終わりです。

だからこそ、「新しいものを創造する」ことにこだわるより、すでにあるニーズの本質を見抜く方が、事業としてははるかに確実です。

発見する力は、日常の「なぜ」で鍛えられます

では、どうすればニーズを発見できるのか。

特別なリサーチは必要ありません。

日常の中で、常に「なぜ」を考える癖をつけることです。

なぜ、これが今流行っているのか。
なぜ、人がこの店に並ぶのか。

そして逆に、

なぜ、ここはこんなに良さそうなのにうまくいかないのか。

こういう視点で街を見るだけでも、見えてくるものはまったく違います。

まとめると

新しい価値を生み出したい、何かを創造したいという気持ちは、起業家としてとても良い資質だと思います。

ですが、ニーズは作るものではなく、発見するものです。

そして、その発見の種は、特別な場所ではなく、毎日の生活の中にいくらでも転がっています。

すでに事業をされている経営者の方にも、ひとつ問いかけたいと思います。

新しい何かを作ろうとする前に、目の前のお客様がすでに抱えているニーズを、見落としていないか。

ニーズは、いつでもそこにあります。

足りないのは、それを見つける目の方です。

今回は、ニーズの発見についてのお話でした。

現在、私はYoutube、Podcastにて番組を行っています。

そこでは、リスナーさんからの質問にお答えする形で少し泥臭い経営論を台本なしで展開しています。

よろしければそちらもご確認いただければ幸いです。

それでは次のコラムでお会いしましょう。

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