今回は具体的な事例ですが、「居酒屋さんなど夜間営業のお店がランチ営業をする」というよくあるパターンについて、ほんの少し考え方を間違えただけで倒産してしまう、そんな話をしたいと思います。
コロナ禍において、ランチ営業を始めた居酒屋さんが増えました。
少しでも収益を上げるため、どのお店も必死で策を練っています。
それが昼間の営業を始めるという選択肢に繋がるのは容易に想像できますね。
今回は個人店居酒屋を例として考えてみましょう。
ランチ営業の位置づけ
レストラン関係ではランチをやる理由とは基本的に「幅広い層にお店を知ってもらい、メインである夜間営業に来店してもらうため」と言われています。
ランチは基本的に「サービス品」という位置づけにされることが多く、利益率は低いもの。
もちろん、多少の収益にはなりますが、多くの経営者が「家賃は24時間発生しているし、仕込みで店にいるのだから、そのタイミングで開けたら少しでもお金が入ってくる。そして美味しかったら夜の営業にも来てくれるから集客にもつながる」のでランチ営業に走ります。
コンサルタントの中には上記の理由からお店側にランチ営業を勧める人もいるようです。
アルバイトと、仕込みをしながらランチを作るオーナーがいれば文脈上は成功するのですから。
ランチ営業の勘違い
上記理由からランチ営業を始めた場合、十中八九失敗します。
それはマーケティングの5フェーズに当てはめるとよくわかります。
- 集客活動
- 潜在顧客への教育
- 販売行為
- 顧客化
- 個客化
何度もこのブログで書いているので覚えてらっしゃる方もいるかもしれませんが、上記が私が考えるマーケティングに置いて一段階ずつ行う5フェーズです。
居酒屋さんにおいて、ひとつめのゴールとして設定されるのは③の夜間営業への来店でしょう。(小売店と違って、居酒屋さんに行って買わずに店を出ることがないので、この場合は来店=販売行為の成功とします)
そして、来ていただいた方に顧客化となってもらう様々なアプローチを行いますね。
ランチを集客と捉えた場合、利益率の高い夜間営業に促すには何かしらの工夫がいりますが、大体のオーナーは「美味しければ来る」と思っており、それ以外の工夫は何もしていません。
利益率の低いランチと利益率の高い夜間営業、味だけでいうとお客様が「コスパが良い」「お得」に感じるのはどちらでしょうか。
よっぽど圧倒的な味がなければわざわざランチで選んだお店に夜行こうとは思わないと経営者は考えた方が良いでしょう。
これが現実です。
美味しい店は他にも沢山あるからです。
必要なのは「顧客教育」だけ
それでは、どういう工夫をすればいいのか、ここで5フェーズの話に戻します。
集客→潜在顧客への教育→販売→顧客化→個客化
この中で、「ランチ→夜間営業」は「集客→販売」のため「潜在顧客への教育」をしなくてはいけません。
潜在顧客への教育とは、今後お客さまになる人が「買うならここで買おう」と思うために“教育“をし、お客さまを育てることです。
昔からの手法ではメルマガ、DMなどがあり、今ではSNSを活用した「今後のお客さまになりうる人へのアプローチ全般」を言います。
ではお得なランチから“コスパが低くなる”夜間営業へどのように“教育”するのか、色々な方法がありすぎるかと思いますが、間違いなくコミュニケーションが必要になります。
さて、普通の居酒屋さんで何も考えずにランチをした場合、どうなるか。
ここは皆さんのビジネスにも置き換えながら考えると良いと思います。
実はマイナスプロモーションのランチ
ランチは「せっかく店にいるのだから少しでも収益を」という理由で、勧められたりし始める人がいるという話はしましたが、果たしてプラスになるでしょうか。
夜の仕込みをしながら、ランチを対応し、収益を生むためには最低限の人員で行いますが、最悪のパターンは経営者が調理をする職人経営者の場合です。
こだわりを持ってしっかりとしたお店であればあるほど、ランチに手間をかけますが、そのせいで夜間営業に促すコミュニケーションはできないでしょう。
そして、ただ料理を出して食べてもらうお店だけになり、ランチでコスパを知ってしまうと夜間には行かない。
本来だったらふらっと夜間に来るはずだった潜在顧客の来店にストップをかける形になります。ランチをしていなければ夜間の収益があがったかもしれません。
潜在顧客への教育のやり方は色々あります。
ランチと一緒に、何か旬なものをアルバイトの方に伝えてもらうなど、別に紙一枚作ってテーブルに置くのも良いでしょう。
一番だめなのは、何も考えずに集客をしてしまうことです。
最後に
実はこれは最近3件ほど実際に見たランチ営業をしている居酒屋さんの事例です。
どこも経営はラクそうではありませんでしたが、すごく格安で「集客のため」のランチを提供されていました。
「販売のため」の方法を知っていれば必ず上向きになるのにな、と思いながら帰りましたが、居酒屋さんだけでなく皆さんのビジネスにも同じようなことは潜んでいるかもしれません。
それが「潜在顧客への教育不足」です。
これなくして経営は成り立たないのではないかと考えています。
ただ集客して潜在顧客を返してしまっているものがあるなら一旦立ち止まってビジネスモデルを考えてみるのが良いと思います。
皆さんのご意見をお待ちしています。
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