辞める時期を聞く

最近ではゴールを決めて仕事をするという認識が増えてきており、どの会社や組織でも出口戦略、目標設定という言葉を聞くようになりました。

 

上辺では、と付け足しておきます。

 

出口を決めてビジネスをしなくてはならないは絶対ですが、大事な経営資源について出口戦略を持っていない経営者や管理職が多いことには驚きます。

 

「ヒト・モノ・お金・情報・時間・知的財産」

 

この六大経営資源の出口戦略の例ですが、

 

ヒト→昇進・退職

モノ→減価償却・耐用年数

お金→売上目標・税金対策・会社の売却

情報→他社製品・マーケット情報

時間→残業削減・効率化

知的財産→著作権の期限

 

これ以外でも、期間を区切ると、出口は沢山あります。

ほとんどの項目に共通するものはコントロールできる、もしくはすでに最初から決まっているということ。

 

しかし、経営者がいつも失敗するのは「ヒトの退職」です。

 

 

「辞めようと思います」

 

 

この予想外のセリフに皆さんはショックを受け、現場は混乱、業務負担が他のメンバーに、なんてことが起こったことはないでしょうか?

 

 

ほとんどの管理職以上が経験するであろう退職願いですが、驚いた管理職にいつも私は問うことがあります。

 

「彼/彼女はあなたが会社にいる間ずっと辞めないと思っていましたか?」

 

そして、ほぼ全員の方が言うのが、

 

「もちろん、ずっといるとは思っていませんでしたが、今だとは思っていませんでした。」

 

その後に私は聞きます。

 

「いつ辞めるか聞いていましたか?」

 

こう聞くと必ずと言っていいほど、

 

「いやいや、とんでもない!なんで辞める時期なんてきくわけないじゃないですか!」

 

という反応をします。

中には怒る人までいます。

 

 

さて、皆さんならお分かりでしょうか?

 

経営資源で一番大事なのは「ヒト」です。

その理由は「ヒトだけが他の経営資源を増やしたり減らしたりできる存在だから」です。

 

ということは、その「ヒト」の出口を知らないまま“なんとなく”経営をしているということは経営資源について考えられていない=経営や組織マネジメントができていないということに等しいのです。

 

しかし、現実にはそういう経営者が多いのも事実です。

 

しかし、これを知った方は必ず、辞める時期について聞くようにされています。

 

 

では、どうやって「辞める時期」を聞くのか。

 

「いつ辞めるつもり?」

「辞めるつもりはある?」

「転職とか考えたりしてるの?」

 

 

素直な人はこんな聞き方をしてしまうかもしれませんが、もちろん絶対NGです。

今の時代にこんな聞き方をすると「パワハラされた」と言われても仕方ありません。

 

 

聞き方の前に、まずはポジティブとネガティブの2パターンの情報は知っておきましょう。

 

ポジティブ

その人がどんな目標を持っていて、どういう状態になったら次のステップに行くか。

ネガティブ

その人がどんな状態になれば、仕事が嫌になるか。

 

 

「どういうきっかけで、この会社を選んだか」

「前に持っていた将来の夢はなんだったか?」

「転職したきっかけは?」

 

聞き方は沢山ありますが、これらの2つを知っておくための質問が“尋問”にならないためにも、必ずその人に対して真摯に向き合い、せっかく一緒に働くのであれば自己実現のためのステップとして今の仕事をしてほしいと本気で思わないといけないでしょう。

 

そのときに、軸として持っていないといけないのは、その人の人生の目標までの通過点に今の会社があるということ。

会社にずっといるのがその人の人生ではないこと。

優秀な人材は飛び立つものと認識しなくてはいけません。

 

会社愛に溢れているひとはそれが理解できないようですが、どれだけその人が会社を好きに見えていても「宝くじが当たったら辞める」というなら、それは「お金」を稼ぐために仕事をしていることであり、「給料が一緒でも他の会社でもっと上の役職が与えられるなら辞める」なら求めているものは権限だったり名誉というようになります。

 

本当に「ヒト」を大事に思うなら何があっても辞める時期を共有していなくてはいけません。

 

面白いもので、「会社が好きで、こんな良い制度がある会社は皆も好きに決まってる。だから自分にできることをしてあげよう」という人と、「皆たまたまこの会社を選んだだけで、人生の目標はもっと別にある。だから自分にできることをしてあげよう。」という人ではチームとしての成果は大きく変わります。

 

もちろん、後者の方が成果を出します。

私も経験していますが、結果後者のチームの方が成長を遂げ、皮肉なことに社内で出世していくのです。

 

理由は簡単で、感情ではなく情報によってマネジメントしているからです。

言い換えると、感情も情報の一部分として考えるからです。

 

 

同じ時間を共有するメンバーとの時間を大事にしたいと思うなら、成果を上げるチームを作りたいなら、ヒトを大事にしなくてはいけません。

 

世の中に出回っている組織マネジメントが書かれたビジネス書には、会社にいること前提、会社が魅力的ならずっといる前提とした旧態依然の考え方をベースとして書かれています。

 

そのため、結局はヒトを大事にしていない、コマとしか考えていないように見えます。

 

 

皆さんはどうでしょうか?

 

一緒にいるメンバーのことを考えていますか?

今は任せた仕事ができない人も、心の中には目標や理想の自分を持っています。

 

それを一緒に共有できるのはマネジメント層の特権です。

そして、経営資源の分配はマネジメント層の醍醐味です。

人を殺すも生かすもマネジメント層の責任です。

 

 

たったひとつ「辞める時期」を聞くだけで全員が働きやすく、成果も出し、先読みもできる。

これは知ったからにはやってほしいと思います。

 

 

ご意見ご感想があれば是非お待ちしております!

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