値下げと付加価値をつけることが同義な理由

クライアント先で、商品価格について値上げと値下げについてお話しすることが多いのですが、意外と勘違いしがちな落とし穴があることがわかりました。

 

1.今回は、値下げをするということを考え、

2.値上げをするときに陥りがちなミスを知る。

 

このようなことにスポットを当てたいと思います。

 

1000円の商品(原価400円)を値下げするか、値上げするか

 

ある定食屋さんでは1000円のランチ定食を出しています。

今、利益は一応確保できているといった状態ですが、今後さらに利益を出したいと考え、客数を増やすことを考えました。そこで900円にしていっぱいお客さまに来てもらおうという作戦を立てました。

ちなみに、周辺エリアでは1500円のランチもあれば500円のランチを出す店もあります。

 

よくある話ですが、みなさんはこの事例をどのように考えますか?

私は基本的には特別な条件が整わないと値下げはしませんが、今回の例で値下げを行うとどうなるかについて考えたいと思います。

 

1000円の商品を900円で販売した場合、同じだけの利益を出すには、1.2倍の数を売らなくてはいけません。

もし800円で販売となれば1.5倍の数が必要です。

 

数が多くなったときには経営上のデメリットも存在します。

それは、クオリティの維持です。

数が多くなるとサービスの維持をするためにはそれに比例してクレームが増えます。2割増では人員を増やさなくてはいけないかもしれません。

 

当たり前ですが、値段を下げたからと言って数が増える保証はありませんし、むしろマーケットによっては日本のようにそもそも人口が減ってしまうのが目に見えているところもあるでしょう。

それでも売れなくなると値段を下げたくなることが多いようです。

 

 

では逆に値上げするのはどうでしょうか?

例えば100円の値上げをすることで、客数は15%減らせます。

200円の値上げをすれば客数を25%減らせます。

 

もちろん、同じ数を販売するだけで利益は上がりますが、10%客数が減ったところで利益は1000円のときより確保できる形になります。

しかも、まったく同じ人員、サービス、クオリティで出来ます。

 

もちろん、中には仕入れ業者を叩いて同じクオリティのものを100円安く仕入れる、または100円安いものを仕入れて提供するということを考える人もいますが、根本的に“下請け”業者にしわ寄せを持っていくことや、素材を悪くするというのはそもそも間違いです。

 

 

付加価値を付けて値上げをするか、ただ値上げをするか

 

実は、この例えでは多くの経営者が、“ただ”値上げすることへの抵抗からか、「じゃあ定食に原価50円の一品を付けて100円の値上げをしよう」という発想をします。

 

たしかに、1000円(原価400円)→1100円(原価450円)は粗利面では600円から650円になるため王道の戦法のように感じます。それであれば7.7%客数が減っても問題ないでしょう。

 

 

多かれ少なかれ飲食に限らず、この「付加価値を付けて値上げ」という方法は多くの業界で成功事例のように扱われますが、実際に本当にうまくいったという話は見たことも聞いたことがありません。

 

当たり前ですが、一品増やすことで手間がかかります。

この手間というのは作るものそうですが、社員やアルバイトがいれば説明など教育に充てる時間の手間ということでもあります。

ということは、一品増やすことでせっかくの客数を減らしても良い分、手間が増えるため実際の利益では1000円のときと変わりません。

もし、客数が同じであればサービスのクオリティが下がることでしょう。

 

 

実はここで考えなくてはいけないことは、「付加価値をプラスして値上げをする」という方法は「値下げをする」こととほとんど同じ状況になるということです。

 

 

私は自信を持って「ただ値上げをするだけでよい」と言います。

 

 

実際、私が買ったソフトクリームのお店はほとんどの商品を実質50円~100円以上値上げし、商品を3分の1減らしました。詳細は省きますが、手間がかからない商品ラインナップ中心にしました。その上で“付加価値”であるポイントカードも廃止しました。

そのおかげで損益分岐点(プラスマイナスゼロの売上金額)に対して今までは1500個/月を販売しなくてはいけないソフトクリームが、今では1100個/月ほどで利益が出るようになりました。

 

これによって何が変わるか。

 

考える時間、商品開発の時間、マーケティングの時間、他のビジネスを準備する時間、というように「自由な時間」を手に入れることができます。

 

このように、金額設定のみで経営は大きく変わります。

 

でも値上げすることが良いわけではない

 

ここまで、値下げと値上げについて話しましたが、値下げが悪くて値上げが良い、という話ではありません。

 

「適正な価格で適正な利益をもらう」ということが大事なのです。

 

価格とはどうやって決まるか、ということは考えたことがあるでしょうか?

価格とは、原価から計算するものではありません。

また、競合がいくらで売っているからと言って決めるものではありません。

いくらだったらその商品を買ってもらえるか、で決まります。

 

多くの経営者が適正な値段で適正な利益を得ることを忘れています。

「売れそうな値段で、利益は少なくとも、理想の数を売れば、経営が上手くいく」という不確かな論理で値付けをします。

 

自社のサービス、商品など考えていくらで買ってもらえるのか、もちろん市場調査として競合店やライバル店の金額も確認しなくてはいけませんが、同じ商品なのか、サービスレベルも同じなのか、しっかり考えなくてはいけないでしょう。

 

 

余談ですが、東京ディズニーランドやUSJは毎年値上げをし続けています。

開発にかかる金額であったり、会社に置いておくお金をキープするためなど理由はあるでしょうが、コロナの中で休業しても再開しています。

これが先ほどの例の飲食のような経営をしていれば数カ月で倒産していたと思います。

 

 

私は、「ディズニーランドやUSJのチケット代が倍になっても園内にいる人が半分になるんだったら喜んで買う」といつも言っていますが、金額帯変わればそれが欲しい層が出てきます。

 

日本は人口が減少していく中で、顧客数が少なくても成り立つビジネスモデルを作っていかなくてはいけないでしょう。

さて、今回は値段というテーマでお話ししましたが、皆さんのビジネスでは適正な価格で適正な利益が出ていますか?今回、価格設定について考える機会になればと思います。

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