価格設定にハコは大事なのか。
価格を決めるとき、皆さんはどのように決められていますか?
先日、クライアントのお店(和食)でコース料理の金額を、
8000円→10000円
11000円→15000円
というように毎度のことながら値上げをすることなりました。
そのときに、とある経営者の口から出た言葉をきっかけにもう一度、価格設定についての考えをまとめようと思いました。
その言葉とは、
「15000円にするなら正面の棚の素材は○○にしないといけないし、カウンターの木も〇〇を使わないといけないですね」
というものでした。
皆さんはどのように感じますか?
私は「また出たな」と思いました。
というのも、金額を上げるということは、もっと良い空間を作って、良いものを仕入れなくてはいけないとう考えを今まで幾度となく聞いて来たからですが、果たしてこれは正解なのでしょうか?
今回は店の作りや場所、つまり「ハコと価格について」そして「価格設定についての考え方」の話です。
皆さんの参考になればと思います。
価格設定、3つの方法
私はほぼ間違いなくクライアント企業の商品価格を上げる提案をしますが、それは価格設定について、上記経営者の方のように間違った認識が多いからです。
それでは価格設定はどのように決めるでしょうか?
価格設定には3つの方法があります。
- 原価から計算する方法
- 一般的な価値から計算する方法
- 顧客特有の価値から計算する方法
この3つの方法で大体説明がつきます。
原価から計算する方法とは原価率を重視して考えるこですね、原価率を30%で考える企業だと300円で仕入れたものだから1000円にするといったもので、多くの企業でこれが使われています。
一般的な価値から計算する方法とは、○○だから○○円くらい、という一般的な考えや競合店の価格に合わせることを基本的に言います。飲食店では原価の計算と一般的な価値から計算する方法をとっているところが多い印象です。
ということで顧客特有の価値から計算する方法についてお伝えしたいというのが既に伝わっているかと思いますので、それを説明します。
誰もやらない顧客特有の価値から計算する方法
顧客特有の価値とは何か?
一般的な価値とは、他と比べた価値や一般的に根付いている価値観に基づいた価格決めの方法でしたが、顧客特有とは、その顧客独自で持っている価値観に基づいた金額の設定です。
例えば、日本では英会話はひと月1万円から2万円が相場でしたが、今では30万円払うコースなど高価格帯が出ています。
教える先生がスペシャルな人かというと月1万円の先生と全くレベルが変わりません。
変わるのは、その顧客が達成しなければいけない目標がはっきりとあり、それが30万円払ってでも達成しなくてはならない、もしくは払う価値があるということです。
英会話の例では、趣味で英語をしたい人からすると30万円は圧倒的に高いですね。しかし、TOEIC800点を取ると昇進することが決定している英語が苦手な人からするとその昇進でアップする給与が5万円なら30万円はスキルもアップするため安く感じるでしょう。
私の知っている英会話教室では顧客から100万円以上をひと月もらっていますが、それは年商100億円の会社の社長などが対象で、社長が英語が話せることで市場が広がり、更に年商が何億上がるかということからこの金額設定にしているとのことです。
しかし、これが日本のみを対象にする業界であれば100万円に価値は見出せませんね。
つまり、顧客特有の価値とはそのまま、その顧客だけがもっている価値であり、それを埋めることができるサービスには価格設定の常識はあまり通用しないというものです。
顧客特有の価値で価格を決めるべき理由
私は、
原価から計算する方法を下策
一般的な価値から計算する方法を中策
顧客特有の価値から計算する方法を上策
と考えていますが、それには理由がいくつかあります。
顧客特有の価値で考えると、高い値段にも価値があると顧客には考えてもらえます。そしてその顧客にサービスをしっかりできることになります。
また、しっかりと利益が出るため、その企業が存続しやすい環境になるため、倒産や閉店による顧客への裏切りが極めて少なくなります。
そして、原価や一般的な価値で価格を決める企業は必ず価格競争か、同価格帯でのサービス競争になります。
このしわ寄せは誰にくるかというと、英語のように商品に形がない業界ではスタッフに負担がかかり、商品に形がある業界では卸業者や製作者に負担がかかります。
実は、商品に形のない業界ではスタッフに負担がかかるだけでいいのですが、(本当はそれでもよくありませんが、)小売りの業界では、製作者にまで負担が行くとそもそもその産業自体の縮小につながります。
非常に怖い事態ですが、実際に起こっている業界はかなりあります。
価格設定にハコは重要ではない
話を戻しますが、価格設定にハコが重要というのは一般的な価値から計算する方法であり、その一般的な価値に沿って価格を決めると必ず値上げをしないといけないタイミングがやってきます。
しかし、値上げのたびに内装にお金をかけていては出す商品は高額でもずっと同レベルの経営しかできません。
顧客特有の価値をしっかりと理解し、その顧客に適正なサービスを適正な金額で行うことがこれからの価格設定には必要になってくると考えています。
特にサービス業では、ただの一般的な価値に基づいて価格を決めるのであれば人ではなくロボットが代わりに業務をする業界となるでしょう。
その人件費をまかなってでも価値のあるエリアにおいては人が非常に重要になってきます。
私のクライアント企業には先取りで人がレベルアップするようになってもらいたいと考えています。
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