値上げすると客が離れる不安や恐怖と、どう向き合えばいいですか? ――「客の選別」という、値上げのもうひとつの顔

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値上げすると客が離れる不安や恐怖と、どう向き合えばいいですか? ――「客の選別」という、値上げのもうひとつの顔

今回、Youtubeをリニューアルし、Podcastを新しく始めるにあたってリスナーの方から来た質問にお答えする形でそれぞれ台本なしの経営トークを展開していますが、こちらでは並行して連携をしたコラムをまとめます。

フリートークでわかりにくいことなど文字にまとめて読みやすいようにしていますのでこちらも経営の参考にしてください。

「値上げをすると顧客が離れる恐怖と、どう向き合えばいいですか?」

この質問、本当によく相談を受けます。

原価も人件費も上がっているから値上げしなければまずい、頭では分かっている。

でも長く通ってくれた常連さんの顔が浮かんで、どうしても踏み切れない。そういう相談です。

先に結論を言ってしまいます。

「値上げをすれば、お客様は離れます。」

これは事実です。

販売アドバイザーみたいな人の中には「価値をちゃんとお客様に伝えれば値段が上がっても誰も離れません」というような話をする方もいますが、完全に嘘です。

多分ほんの一部の販売現場しかしらない人は実体験だけで言うのです。本当の現場はそんなに綺麗なものではありません。

ただし「値上げをすればお客様が来ます」は矛盾してないか?

そう思われた方もおられるかもしれませんがこれも事実なのです。これを知らない人が非常に多い。

今回ご質問いただいた方の場合で言う「不安」や「恐怖」は少し的が外れていると思っています。

怖がるべきなのは「値段を上げることでお客様が離れること」ではなく「経営者自身が自分でお客様を選べていないこと」だと私は考えています。

まずは大前提、値段を上げなければそもそも企業として縮小していく、飲食店などなら潰れていく、ということがあると思います。

だからこそ値上げをしたいのだと思います。

さて、ここで、お客様を選べていない、ということを言いましたが、価格とは何か。

価格には2つあると思います。

ひとつめは「顧客の選別」
そして、ふたつめは「時間の創出」です。

人の選別は本来非常に難しいのです。

例えば、日本の会社では、気に入らない社員に辞めていただくのは大変です。

話し合いも必要ですし、手続きも要りますし、相当神経を使って対応しなくてはいけません。

ところが顧客に対しては、意外と簡単なのです。それが価格とサービスです。

値上げをすると、価格しか見ていなかったお客様が静かに離れていき、価値を見てくださっていたお客様が残ります。

誰にも「お取引をやめます」とは言っていないのに、客層が自然と入れ替わっていくのです。

これほど簡単にでき、角の立たない顧客選別の手段は、経営において他にないと思っています。

値上げを単に「売上を増やす手段」だと捉えているうちは、この装置が本来持っている威力を使いこなせていないということになります。

数字で見てみましょう

ここで一度、感情の話を横に置いて、簡単な式をお渡しします。

利益を維持したまま、お客様が何割まで減っても大丈夫か。これはこの式で出せます。

許容できる客数の減少率 = 値上げ率 ÷(粗利率 + 値上げ率)

具体的に入れてみましょう。

粗利率30%の商売で、10%値上げした場合。

0.10 ÷(0.30 + 0.10)= 0.25

お客様が4分の1いなくなっても、利益は1円も減りません。

実際の数字で確認してみます。

1,000円の商品、原価700円、粗利300円、月に100個売れているとします。

粗利の合計は30,000円です。

これを1,100円に値上げすると、1個あたりの粗利は400円になります。

75個しか売れなかったとしても、400円×75個=30,000円と、まったく同じ利益になります。

さて、実際に10%値上げして、本当にお客様の4分の1が離れるでしょうか。ほとんどの場合、そこまでは離れません。

100個売っていたのが75個で同じ利益が出たとしたら何をしますか?

実は経営者として絶対に忘れてはいけないのがここなんです。企業として25個分の販売時間が減ります。

しかし同じ利益が出るのです。

つまり、時間ができる、ということは商品開発に時間を取れます。
新しい事業を作ることもできます。

もちろん、既存の顧客へ強固なサービスを築き上げることだってできます。

つまり、値上げをすることで余裕ができるというのは、常識なのです。

ちなみに、最初の「値上げをしたら顧客が減る」は事実ではありません。僕のお客さんの飲食店では3倍に値段を上げて売上が15倍になったところだってあります。

これは結局、値段を上げることによって必要な顧客層に届いたということです。

逆側の計算も見ておきましょう。据え置きにも代償があります

同じ式を逆向きに使ってみます。

10%値引きした場合、利益を維持するために必要な客数の増加率は

0.30 ÷(0.30 - 0.10)= 1.5

1.5倍です。お客様を50%増やして、ようやく現状維持になります。

値上げは「25%減っても大丈夫」、値引きは「50%増やさないと立ち行かなくなる」。

この非対称性こそが、価格というものの正体だと思っています。

そして「据え置き」は、実は中立ではありません。

原価や人件費、家賃が上がり続ける中で価格だけを止めておくのは、毎年少しずつ値引きしているのと同じことになります。

決断を先送りしているつもりが、実は毎月静かに値引きを実行しているというのが実態です。

最後にお伝えしたいこと

守ろうとしている常連のお客様の顔。それは本物の情だと思いますし、否定するつもりはありません。

ただ、経営者として一つだけ見ておいていただきたい構造があります。

値上げできない会社は、いずれ社員の給料を上げられなくなります。

そして、結局潰れればその常連のお客様は付き合う企業をなくします。

粗利が増えなければ、原資はどこにもありません。価格を据え置いて守ったお客様の代わりに、離れていくのは社員かもしれません。

しかも社員は、値上げで離れるお客様のようには静かに去っていきません。多くの場合、一番信頼していた人から辞めていきます。

私は再生の現場で、この順番を何度も見てきました。

値上げとは、お客様を裏切る行為ではないと思っています。誰を守るのかを、経営者が決める行為なのです。

決めていないとすれば、それは優しさではなく、ただの先送りなのかもしれません。

今回は値上げについてのお話でした。現在、私はYoutube、Podcastにて番組を行っています。

そこでは、リスナーさんからの質問にお答えする形で少し泥臭い経営論を台本なしで展開しています。よろしければそちらもご確認いただければ幸いです。

それでは次のコラムでお会いしましょう。

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