実績のないチームに、優秀な人は来ません ――立ち上げ期に集めるべきは、実力ではなく「共感」です
PodcastとYoutubeで、リスナーの方から来た質問にお答えする形でそれぞれ台本なしの経営トークを展開していますが、こちらでは並行して連携をしたコラムをまとめます。
フリートークでわかりにくいことなど文字にまとめて読みやすいようにしていますのでこちらも経営の参考にしてください。
「エンジニアとして会社員をしながら、Eスポーツチームの運営をしています。Eスポーツチームは、まず実力のある選手を獲得することが、チームの実績や知名度を伸ばす第一歩なのかなと考えています。ただ、まだ実績も知名度もない立ち上げ直後のチームの場合、選手にとってこのチームに入るメリットがなく、獲得すること自体が難しいのではないかと感じています。立ち上げ初期に特に意識すべきことや、選手・所属タレントを獲得するための考え方について教えていただきたいです。」
私自身もeスポーツ事業を手がけ、チームを持っていますので、他人事ではないご相談です。
そしてこれは、eスポーツに限った話ではありません。
立ち上げたばかりの会社が、実力のある社員をどう採用するか。まったく同じ構造の話です。
先に結論を申し上げます。
立ち上げ期に、優秀な選手を獲ろうとするのは諦めた方がいいです。
まず「何のためのチームか」を決めてください
実力のある選手を獲得することが、強いチームをつくる第一歩。
これ自体は間違っていません。
ただ、その前に考えていただきたいことがあります。
このチームは、何を目的にしているのか、ということです。
・稼げるチームを目指すのか。
・強いチームを目指すのか。
・知名度のあるチームを目指すのか。
これらは似ているようで、まったく別の話です。
チームを「起業した」と置き換えてみてください。
普通の会社であれば、少なくとも売上目標はあります。
ですが、通常eスポーツやスポーツチームは「売上」ではなく「勝利」や「フォロワーを何人獲得する」という目標を掲げることが多く、一般的な企業とは違った目標を掲げがちです。
先ほど上げた「フォロワー目標」だけで経営している会社はありません。
フォロワーが増えても、売れなければ意味がないからです。
チームも同じで、収益を立てられなければ存続できません。
目的が曖昧なまま「とにかく強い選手を」と動き出すと、どこかで必ず迷子になります。
優秀な人は、できたばかりの組織には入りません
少し想像してみてください。
あなたがサッカー選手で、世界で活躍したいと思っているとします。
できたばかりで「世界を目指します」と掲げている名前の聞いたことないチームと、Jリーグの東京ヴェルディ。
実力があれば、どちらに入りたいでしょうか。
ほとんどの方が、東京ヴェルディを選ぶと思います。
会社も同じです。
どこにでもある商材を扱い、特に特徴もない、できたばかりの会社。
優秀な人ほど、そこには入りません。
優秀な人は、自分が「こうなりたい」という姿をはっきり持っています。
業界ナンバーワンになりたい、こういうふうに稼ぎたい。
その姿がイメージできる場所を選びます。
かといって、大企業と同じようなことを掲げても意味がありません。
同じことを言うなら、優秀な人は大企業の方に行くからです。
「実績も知名度もないチームに強い選手は来ない。でも強い選手がいないと実績も知名度も上がらない。」
ご相談者の方が感じている「無限ループ」は、残念ながら事実です。
立ち上げ期の選び方は、2つしかありません
では、どうすればいいのか。
立ち上げ期に取れる道は、2つだと思っています。
1つ目は、尖った理念をつくってしまうことです。
そのチームにしかない、オリジナルの理念です。
それに共感する人は必ず出てきますし、その理念自体が、結果的にチームの特徴になっていきます。
2つ目は、自分が目指すチームに共感してくれ「普通の人」を入れることです。
尖った特色が出しにくいのであれば、実力はいったん横に置き、オーナーであるご自身の考えや理念に近い人を選んでください。
一発目、二発目からから優秀な人を獲ろうとしないことです。
実績連動の報酬は、オーナーの心を折ります
ここで、ひとつ注意していただきたいことがあります。
ご相談者の方は、エンジニアとして会社員をされているということなので、おそらくゼロから選手を育てた経験はまだないと思います。
その状態で、いきなり実力のある選手を入れると、本当に苦労します。
「これだけ大会に出たんだから、報酬を上げてほしい」
こういった話が必ず出てきます。
特に、大会実績に連動した報酬体系にしてしまうと、かなりの確率で失敗します。
勝てば勝つほど、お金が出ていくからです。
本当は勝ってほしいのに、どこかで「勝ってほしくない」と思ってしまう。
しかも会社員の方であれば、そのお金は自分が汗水たらして稼いだお金です。
そして何より、実績でお金がもらえるから入ってきた人は、より多くのお金がもらえる場所が見つかれば、そちらに行きます。
これはeスポーツに限らず、会社でもまったく同じです。
だからこそ、まずは理念に共感してくれる人を入れ、その人をサポートし、たくさん話をする。
そこで初めて、「選手を抱えるとは、こういうことなのか」が分かってきます。
「最高の成績が出た瞬間」が、一番の危機です
これは意外と誰も分かっていないことですが、正直、どの業界でも起きています。
美容室、歯医者、鍼灸院、整骨院。
オーナーや院長の右腕となる人が育ち、自分以上に成績を出してくれるようになると、当然、儲かります。
ですが、そこが最高到達点なのです。
なぜなら、そのタイミングで多くの人が独立するからです。
お客様を持っていってはダメだと分かっていても、お客様の方がその人についていきたい。
美容師さんなどはまさにそうだと思います。
eスポーツチームでも同じことが起きます。
最高の成績が出た段階で、選手は大手のチームに引き抜かれます。
選手からすれば、ステップアップしたいのは当然のことです。
あるいは、言い方は悪いですが、お金だけを出すチームに持っていかれることもあります。
これには、正直オーナーは太刀打ちできません。
だからこそ、選手をステップアップさせてあげようと思えているかどうか。
ここはオーナーの心づもりとして、とても大事です。
それから、もうひとつ。
選手が実績を上げたからといって、チームの知名度が上がるとは限りません。
野球やサッカーのように、実力を出し続ける選手がたくさんいれば話は別ですが、一人や二人では、その選手の名前が上がるだけです。
アジア大会で活躍した陸上選手が、どこの会社に所属しているか、ご存知でしょうか。
どこかに必ず書いてあるはずですが、ほとんどの方は知らないと思います。
10人入れ替わって、ようやくベストが見つかる
綺麗事抜きで言えば、10人くらい入れ替わって、ようやくベストな人が見つかると思っていた方がいいです。
選手が誰かを煽って炎上する。
SNSでやらかす。
こういうことは、本当に起きます。
ですが、それを繰り返す中で、オーナーはオーナーになっていきます。
運営スタッフを入れるのかどうか、といった判断もそこで出てくるはずです。
自分の考えに近い人と、泥臭く一緒に頑張っていく。
そこから、チームの特徴や尖ったものが見えてくるかもしれません。
それに合わせて、チームをつくり直していけばいいのです。
そうなって初めて、オーナー自身にも自信がつき、スポンサーに「うちと一緒にやりましょう」と営業ができるようになります。
まとめると
優秀な人が入れば成績が上がる。
それはその通りです。
ですが、考えるべきはその手前です。
自分たちは、優秀な人が入ってくるだけの価値がある箱なのか、器なのか。
立ち上げ期は、実力ではなく共感で人を集め、一緒に泥臭く進みながら、自分たち自身の器を大きくしていく時期だと思います。
今回は、立ち上げ期のチームづくりと人材獲得についてのお話でした。
現在、私はYoutube、Podcastにて番組を行っています。
そこでは、リスナーさんからの質問にお答えする形で少し泥臭い経営論を台本なしで展開しています。
よろしければそちらもご確認いただければ幸いです。
それでは次のコラムでお会いしましょう。
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