なぜ赤字になるのですか? ――「作ってから売る」致命的な構造と、強い黒字企業への再生ロジック

なぜ赤字になるのですか? ――「作ってから売る」致命的な構造と、強い黒字企業への再生ロジック

今回、Youtubeをリニューアルし、Podcastを新しく始めるにあたってリスナーの方から来た質問にお答えする形でそれぞれ台本なしの経営トークを展開していますが、こちらでは並行して連携をしたコラムをまとめます。

フリートークでわかりにくいことなど文字にまとめて読みやすいようにしていますのでこちらも経営の参考にしてください。

「なぜ赤字になるのですか?」

この質問は、非常に面白く、沢山の切り口がある質問でしたが、質問者さんの意図するところは、「赤字は、売上よりも経費が大きいから」という算数の問答ではないと考えました。

「ちゃんと経営してないから」

クライアント企業さんになら面と向かってこう言いますが、今回はそういうわけにはいきませんので、多くの企業や店舗ビジネスでも陥っている原因を大きなくくりでひとつお伝えします。

それは「誰も欲しがっていないものを、作って売っているから」です。

さて、ここで私が相談を受ける赤字企業の多くの経営者さんが口にする「3つの言い訳」を紹介します。

人件費がどんどん上がっている
仕入れ・材料費が高騰して利益が出ない
業界のマーケットそのものが縮小している

確かに間違いないでしょう。

確かにこれらはすべて「事実」ですが、同時に経営者を思考停止に追い込む「3つの言い訳」とも言えます。

正しいけれど間違っている、経営にはいつもこのようなある種矛盾と言えることが起こります。

しかし、それでもこれらの方が経営を続けられているということは、諦められない、またはこの環境を原因に赤字を正当化したくないと思っていることの表れだと思っています。

そして、逆に日本の人口が減り続け、全業界でコストが上がっている外部環境の中で、過去最高益を出し続けている企業は存在します。

つまり、外部環境の悪化を理由にした言い訳は、ロジックとして成り立たないということなのです。

おすすめしたい私の経営思考法のひとつとして、こういった数字や経費の削減といった細かい対処療法へ逃げる前に考えてほしいことがあります。

それはとにかく単純に、シンプルに原点に立ち返るというものです。

つまり「商売の原点」へと視点を戻し頭を整理するというものです。(本当に役に立つので困った時こそおすすめです)

大昔からの商売の基本は、「相手が持っていなくて、欲しがっているもの」と「自分が持っているもの」を交換することにあります。

「これが欲しい、この困りごとを解決してくれ」
という目の前の文脈に対して、

「分かりました、ではそれを作って持っていきます」
と応じるのが本来の商売(ビジネス)なんです。

この原点に基づけば、買い手がすでに決まっている状態で商品を提供するのだから、単純な計算上で赤字になりようがないと言えます。(一旦、家賃や光熱費などについては置いておきますが)

しかし、現代の赤字企業の99%は、これと全く逆の動線を走っていることに気づいていただけると思います。

ここで逆走ルートを紹介しておきます。

【赤字企業が陥る逆走ルート】
先に自社で商品を作り、仕入れを行い、在庫を抱える

その後から「誰か買ってください」と市場へ売り歩く

誰も欲しがっていないため売れない

無理やり買わせるために「過剰な広告宣伝費」を投じ、「値下げ」で利益を削り、「在庫廃棄リスク」を抱える

最初に仕入れた時点で「買われる保証のないコスト」を確定させているから赤字になりやすくなります。

最初から「欲しい人・困っている人」に向けて商売をしていれば、過剰な広告費も、売れ残るリスクも、安売りによる利益の圧迫も一切発生しないのです。

やや理想的な言い方になりますが、「欲しがられているから作る」事業は、適正な価格で、適正な利益をいただきながら、確実に顧客から感謝される構造になります。

◾️中小企業にいわゆる“マーケティングリサーチ”は不要である

「困っている人を見つける」と言うと、それがマーケティングリサーチとなります。

ただ、そこで騙されてすぐにマーケティングリサーチに頼ろうとする中小企業が多いのです。

しかし、莫大な資金と時間を投資できる大企業ですらこのリサーチを外して赤字プロジェクトを生み出していることを考えると、中小企業、ましてや個人事業サイズで大それたことをしてもギャンブルにもならないと理解できるでしょう。

資金もリソースも限られる中小企業や実業の現場において、机上の空論に近いマーケティングリサーチなどは不要(不可能とでも言いましょうか)であり、そもそも機能しないのです。

では何をしたらいいのか?やるべきは、

「目の前のお客さんが、今本当は何に悩んでいて、どうしてうちの商品を買ったのか?」

という、現場での泥臭い観察と対話です。

この一次情報を獲りに行く労力をサボり、「自分たちが売りたいもの(独りよがりのモノ)」を作るから赤字に向かっているのです。

◾️なぜ飲食店の70%が3年で潰れるのか? ――「食べ物」を売るな

もっと具体的な身近なところに話を持っていくと、この「困りごとの解決」というロジックで解剖すれば、おいしいものを出しているはずの飲食店が、なぜ3年で70%も廃業していくのか、その答えが即座に説明できます。(ちなみに飲食店は年間8万件ほどが開業し、それと同数が廃業すると言われています。)

現代の日本において、「食事(食べ物・飲み物)」を売ることは、何の困りごとの解決にもなっていないのです。

「ただお腹が空いた、安くておいしいものを食べて腹を満たしたい」という機能的な困りごとは、コンビニや牛丼チェーンで既に100%解決されています。

それにもかかわらず、「自分が日本料理の修行をしたから」「おいしいパスタが作れるから」という理由だけで「食べ物」を売ろうとすれば、顧客が求めていない戦場で価格競争に巻き込まれ、確実につぶれます。

ということは、飲食は困りごとの解決にならないから潰れるのか?どうしようもないのか、と言われるとそうではありません。

視点を変えることで解決できます。

それは、飲食店で黒字を出し続けるためには、

食べ物を売るのではなく、「その場に行くことでしか解決できない困りごと(価値)」を組み込まなければならないということです。

最たる例であり、有名なのがスターバックスでしょう。彼らは最初から自分たちを単なるコーヒー屋ではなく、「サードプレイス(家でも職場でもない第三の場所)」と定義しています。

「一人暮らしの寂しさを紛らわせたい」
「同じような雰囲気や熱量を持つ人たちと同じ空間で過ごしたい」
「心地よい接客で承認されたい」

そうした現代人の情緒的な困りごとを解決しているからこそ、顧客はコーヒーという飲み物ではなく「場所と時間」に高いお金を払い続けることができます。

◾️家電量販店に勝つ「町の電気屋さん」と、高単価ビジネスの共通点

この法則は、すべての業界に共通しています。

地方都市にある「町の電気屋さん」が、Amazonや家電量販店の圧倒的な安売りに負けず、高収益を上げ続けている事例がある。彼らが売っているのは電化製品ではありません。

・「リモコンの設定方法が分からない」と呼ばれれば、原付ですぐに駆けつけて設定する
・「高いところの電球が切れた」と言われれば、電球1個のために交換しに行く
・ついでに重たいスーパーの買い物まで手伝う

彼らは家電を媒介にして、「高齢者の暮らしの不安や孤独という困りごと」を徹底的に解決しています。

だから、Amazonより格段に高い定価であっても喜んで選ばれるのです。

メルセデス・ベンツやレクサスのような高級車、あるいは数十万円のパーソナルジムなど、人がわざわざ高いお金を払うビジネスモデルには、例外なく「ステータスによる自己肯定感の獲得」や「一人では継続できない弱さの克服」といった、深い困りごとを解決する強烈な付加価値が組み込まれているというのが少しずつ分かってきたのではないでしょうか。

まとめると、赤字に陥っている決裁者が自らにぶつけるべき問いはひとつです。

「うちは一体、“何”を売ってしまっているのか?」

顧客が本当にお金を払ってでも解決したい「困りごと」や「欲しいという文脈」を徹底的に現場で読み解き、自分たちが提供する商売の構造を根底からかき混ぜて組み直すこと。

単なる経費削減ではない、この「経営資源の大胆な組み換え」を実行しない限り、赤字経営における出血が止まることはないでしょう。

逆にこの構造さえ作れれば、いかなる斜陽産業・縮小マーケットであろうと、事業は必ず継続発展する強い黒字企業へと生まれ変わるチャンスがあるのです。

今回は赤字についてのお話でした。
現在、私はYoutube、Podcastにて番組を行っています。

そこでは、リスナーさんからの質問にお答えする形で少し泥臭い経営論を台本なしで展開しています。よろしければそちらもご確認いただければ幸いです。

それでは次のコラムでお会いしましょう。

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