社員全員が同じ方向を向いて、一致団結するべきですよね? ――「ワンチーム」という言葉の危うさ
今回、Youtubeをリニューアルし、Podcastを新しく始めるにあたってリスナーの方から来た質問にお答えする形でそれぞれ台本なしの経営トークを展開していますが、こちらでは並行して連携をしたコラムをまとめます。
フリートークでわかりにくいことなど文字にまとめて読みやすいようにしていますのでこちらも経営の参考にしてください。
「うちの会社では、ずっと『社員全員が同じ方向を向いて、ワンチームで頑張ろう』とやってきました。実際、朝礼でもそう言い続けています。ただ最近、一致団結を掲げていたはずの同業者が経営難に陥っているのを見て、このやり方は本当に正しいのだろうかと迷い始めています。社員がバラバラに見えるのが怖くて、つい『みんなで同じ方向を』と言ってしまうのですが、これは間違っているのでしょうか?」
まず申し上げたいのは、ご自身の違和感は正しい、ということです。
感覚的に、かなり鋭いところに気づかれていると思います。
同じ方向に進めば、崖があったとき全員で落ちます
「一致団結」「ワンチーム」という言葉は聞こえがよく、経営者であれば一度は掲げたくなる言葉だと思います。
ただ、これを文字通り実行してしまうと、危険な状態になります。
全員が同じ方向、同じスピードで進む組織は、なんだか統制が取れており格好が非常に良い。
そして、正しい方向に進んでいるうちは勢いもあり、非常に強く見えます。
ですが、実際によくあるのですが、もしその方向が間違っていたとき、あるいは目の前に崖があったとき、誰もブレーキをかけられず、全員でそこに落ちていきます。
実際、社長が先頭に立って「みんなでこの方向へ」と旗を振り、社員が一丸となってついていった結果、会社ごと傾いてしまったケースを、私は現場で何度も見てきました。
一致団結そのものが悪いのではなく、全員が同じ速度・同じ判断で動いてしまうことが危ういのです。
組織は、蛇のように動くのが正しいです
私がおすすめしている組織のイメージは、蛇です。
どういうことだ?と思われるでしょう。
鋭い牙でターゲットに巻き付け、というようなものではありません。
動きをイメージしてください。
蛇は、首と体と尻尾がそれぞれ少しずつ違う方向を向きながら、ゆっくりと進んでいきます。
首が先に間違った方向に曲がったとしても、体や尻尾はまだ元の方向に留まっているので、致命的な事態にはなりません。
これを組織に置き換えると、経営者や上層部(首の部分)が先に新しい方向へ動き出し、その後ろにいる社員たち(体や尻尾の部分)は、少し遅れてゆっくりとついてくる、という形が理想です。
もし首の判断が間違っていたとしても、体や尻尾がまだ元の位置にいるおかげで、会社全体が共倒れせずに済みます。
実際にクライアント企業さんでこの状況が起こったことがあります。
製造の会社なんですが、取引先から部品を仕入れて加工するという流れをイメージしていただければと思います。
そこは社長が「経費削減だ」と一気に舵を切り、仕入れ先を変えようとしたんです。
で、実際に仕入れを変えるという旨を仕入れ先に伝えたんです。
つまり社長の一声で仕入れ先を切ったんです。
ただ、ここで部長が変える前の仕入れ先に足を運んで関係性は切らなかったんです。
部長からすると新しい仕入先が信用できないと考えていたのです。
結局新しい仕入先との関係性が上手くいかずに逆にこちらが切られる形になりました。
そこで部長は「大丈夫です」ということで元の仕入れ先とまた取引が継続できるようになったのです。
これは部長は表面上は社長の判断を裏切るような形でしたが、社長と同じように舵を切っていたら会社が傾いていたでしょう。
わざとスピードを落とし、ついていくフリをしながら遅れてついていった例です。
情報も同じです。
社長の言葉がそのまま部長に伝わり、部長の言葉が課長に、課長の言葉が係長に、係長の言葉が一般社員に伝わっていく。
この段階を踏んだ伝わり方は、一見遠回りに見えますが、実はこれが組織を守る仕組みになっています。
という意味では、社長が部長を飛ばして、課長や係長、一般社員に直接指示をする企業はまずいということなんです。
子どものサッカーを思い出してください
もう一つ、わかりやすい例があります。
子どもたちのサッカーの試合を見たことがある方は多いと思います。
ボールがどこにあっても、子どもたち全員がボールに向かって団子のように集まってしまう、あの光景です。
全員が同じ方向(ボール)しか見ていないので、パスを受ける人もいなければ、スペースを守る人もいません。
誰か一人がボールを持って走り出したら、全員がその後ろをついていくだけになります。
会社も同じです。
全員が社長の号令だけを見て一斉に動く組織は、あの団子サッカーと同じ状態です。
誰かが違う場所、違う役割を担っているからこそ、チームとして機能します。
ただし、ゴールは同じでなければいけません
ここまで「全員が同じ方向を向くのは危険」というお話をしてきましたが、誤解していただきたくないのは、目標そのものは同じである必要があるということです。
危ないのは、進み方(アプローチ)まで全員一律にしてしまうことです。
目指すゴールは共有しながらも、そこに向かう速度や役割、判断のタイミングは、それぞれ違っていて構いません。
むしろ違っているべきです。
同じゴールに向かって、全員が同じやり方だけをする組織ほど、環境が変わったときに脆いのです。
まとめると
ご相談の答えとしては、社員がバラバラに見えることを怖がる必要はありません。
怖がるべきは、全員が同じ方向・同じスピードでしか動けない組織を作ってしまうことです。
まずは経営者ご自身が先に動き、社員の皆さんには少し遅れてゆっくりとついてきてもらう。
この段階のズレこそが、会社を守る余白になります。
では、目標だけは同じでなければいけないとして、その「目標」や「進むべき方向」自体は、そもそも何を軸に決めればいいのでしょうか。
ここは経営理念の話にもつながってくると思っています。
今回は組織の動き方についてのお話でした。
現在、私はYoutube、Podcastにて番組を行っています。
そこでは、リスナーさんからの質問にお答えする形で少し泥臭い経営論を台本なしで展開しています。よろしければそちらもご確認いただければ幸いです。
それでは次のコラムでお会いしましょう。
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