「責任は俺が取る」が、部下を育てない理由 ――営業が育つ仕組みは、覚悟ではなく設計です
PodcastとYoutubeで、リスナーの方から来た質問にお答えする形でそれぞれ台本なしの経営トークを展開していますが、こちらでは並行して連携をしたコラムをまとめます。
フリートークでわかりにくいことなど文字にまとめて読みやすいようにしていますのでこちらも経営の参考にしてください。
「私は◯◯(※1)を取り扱っている商社の代表取締役をしています。ウチの営業部長は非常に面倒見が良く、部下に対して『失敗しても責任は全部俺が取るから、思い切り挑戦しろ!』と鼓舞してくれています。社員からの人望も厚く、チームの雰囲気も良いのですが、なぜかその部署から『自立して数字を作れる優秀な若手』が全く育ちません。結局、いつも部長が数字をカバーしている状態が続いています。営業のもってくる成績自体は良いので会社としては良いのですが、将来を考えたときに営業が育ってほしいと思っています。営業が育つ仕組みのようなものはないでしょうか?」
※1 業種を出すとわかってしまう可能性があるためふせてお届けします。
これは、部長の人柄が悪いわけでも、若手のやる気がないわけでもありません。
「責任は俺が取る」という、一見理想的なひと言そのものが、育成の仕組みとして機能していないというだけの話です。
責任は、取らされるものではなく、自ら取るものです
責任というのは本来、他人から取らされるものではなく、自分で取りにいくものです。
仕事の責任は、その仕事をしている本人が負うものであって、上司が代わりに引き受けるものではありません。
部長が「失敗しても責任は俺が取る」と言うのは、部下を守ろうとする、優しさから出た言葉だと思います。
ですが、この言葉を額面通り受け取ると、部下の中では
「この判断がうまくいかなくても、最終的には部長が何とかしてくれる」
という状態になります。
これは、部下自身が責任を負う経験を、上司が善意で奪ってしまっている状態です。
責任があるからこそ、成果が出たときに賞賛される。
責任があるからこそ、仕事は楽しくなる。
この感覚を、若いうちに積む機会を、部長がすべて肩代わりしてしまっているのです。
手柄も、実は同じように奪われています
もう一つ、見落とされがちな点があります。
「責任は俺が取る」という部長は、同時に、成果が出たときも「自分がフォローしたから」という感覚を持ちやすくなります。
自ら手柄を取ろう、褒められようとすればするほど、部下は育たなくなり、それによってさらに任せられなくなる、という悪循環に陥ります。
責任だけでなく、手柄も部下に渡す。
ここまでできて初めて、部下は「自分の仕事」として仕事を持てるようになります。
教育すればするほど、部下が弱くなるという逆説
もう一つお伝えしたいのが、良かれと思って手厚く教育しようとすればするほど、部下は「教育されようとする」弱い人材になってしまう、という逆説です。
部長がフォローに入り続ける状態は、本人は「育てている」つもりでも、実際には「自立して動かなくても、いずれ部長が拾ってくれる」という前提を、部下の中に育ててしまっています。
面倒見が良いこと自体は美点ですが、その面倒見の良さが、若手から「自分で決めて、自分で背負う」経験を奪っているとしたら、本末転倒です。
では、営業が育つ仕組みとは
精神論ではなく、具体的な仕組みとしてお伝えします。
まず、判断をゼロから聞かせないことです。
部下に判断を仰がれたときに、答えをすぐに教えるのではなく、「AとB、どちらが正しいと思う?」と本人の考えを先に聞きます。
その答えが間違っていれば理由を説明して教える。
これを繰り返し、7割以上、本人の判断が正解するようになったら、その業務は本人にすべて任せる。
この線引きを、部長の感覚ではなく、数字として持っておくことが重要です。
次に、責任の所在を最初から本人に置くことです。
「失敗しても俺が取る」ではなく、
「この案件はあなたの判断で進めてもらう。結果もあなたが背負う。ただし詰まったら相談には乗る」
という形にします。
責任を先に肩代わりするのではなく、相談に乗る余地は残しつつ、責任の所在は、はっきり本人に置く、という順番が大事です。
最後に、成果が出たときは本人の手柄として扱うことです。
部長自身のフォローがあったとしても、それを表に出さず、若手の成果として周囲に伝える。
これを徹底することで、部下は「自分の仕事」として次の挑戦に向かえるようになります。
成果に関しては社長が「部長や管理職への評価基準」としていれることでしょう。
まとめると
「責任は俺が取る」という言葉は、部下を安心させる言葉ではありますが、同時に部下から「自分で責任を背負う経験」を奪う言葉でもあります。
人望の厚さや面倒見の良さは、そのままでは育成の仕組みにはなりません。
①判断を先に聞く
②責任の所在を本人に置く
③手柄を渡す
この3つを仕組みとして持って初めて、部長ひとりが数字をカバーし続ける状態から抜け出せます。
今回は、部下育成の仕組みについてのお話でした。
現在、私はYoutube、Podcastにて番組を行っています。
そこでは、リスナーさんからの質問にお答えする形で少し泥臭い経営論を台本なしで展開しています。
よろしければそちらもご確認いただければ幸いです。
それでは次のコラムでお会いしましょう。
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