「飲食店は食べ物を売るな」は、他の業種にも当てはまりますか? ――商売には、いつも”核”があります

COLUMN

「飲食店は食べ物を売るな」は、他の業種にも当てはまりますか? ――商売には、いつも”核”があります

今回、Youtubeをリニューアルし、Podcastを新しく始めるにあたってリスナーの方から来た質問にお答えする形でそれぞれ台本なしの経営トークを展開していますが、こちらでは並行して連携をしたコラムをまとめます。

フリートークでわかりにくいことなど文字にまとめて読みやすいようにしていますのでこちらも経営の参考にしてください。

「第2回の『なぜ赤字になるのか』という動画で、飲食店は食べ物を売るな、という話がありましたが、これは他の業種や業態にも当てはまるのでしょうか。当てはまるなら、具体的な事例を教えてほしいです」

結論から申し上げると、これはほぼ100%、どの業種にも当てはまります。

アパレルが売っているのは、生地ではありません

分かりやすい例で言うと、アパレルです。

ルイ・ヴィトンのバッグは、正直なところ高いです。

カバンとしての機能だけを見れば、他のバッグと大きく変わるわけではありません。

それでもルイ・ヴィトンが選ばれるのは、お客様が「モノ」だけを買っているのではないからです。

あのブランドを身につけている自分は、ある程度ちゃんと稼いでいて、ちゃんと成功しているという自信につながる。

お客様が本当に買っているのは、バッグそのものではなく、その”価値”の方なのです。

これは、スターバックスが「場所」を売っていて、ブラックコーヒーという黒い液体そのものを売っているのではない、という話と、まったく同じ構造です。

物事にはいつも核があり、表面的に並んでいる商品は、その核を届けるための手段にすぎません。

街の電気屋さんは、家電を売っていません

もう一つ、分かりやすい例があります。街の電気屋さんです。

(以前のコラムでも書いていますが再度こちらでもお伝えします)

今、エアコンや電池をどこで買うか考えてみてください。

多くの方は、家電量販店かオンラインだと思います。

実際、街の電気屋さんで家電を買った経験がある方は、もうほとんどいないのではないでしょうか。

それでも、今も街に残っている電気屋さんがあります。

そうしたお店の多くは、実は家電を売る商売ではなくなっています。

電球を1個持っていってくれる。

歩いて買い物に行けないお年寄りのお宅に「何か必要なものはありますか」と聞きに行き、次に届けてくれる。

家の中に入ったついでに不要品を見つけて、引き取ってくれる。

これは、大手量販店やオンラインショップに、価格や品揃えで勝てるはずがないと分かっているからこその戦い方です。

家電という「モノ」で勝負するのではなく、「困りごとの解決」という核で商売をしている。

だからこそ、価格で圧倒的に不利な状況でも、なくならずに残っているのです。

車は、移動手段を売っているのではありません

車も同じです。

ベンツは、鉄の塊でも、ただの移動手段でもありません。

どこかに行くだけなら、正直どんな車でも構わないはずです。

ベンツやBMW、レクサスに、それぞれ「こういう人が乗っていそう」というイメージがあるのは、車という核が「ライフスタイル」そのものだからです。

景気が良かった時代は、作れば売れました。

ですが今は、そのライフスタイルを売っていかなければ、車そのものも売れなくなってきています。

ただし、ここに落とし穴があります

ここまでの話だけを聞くと、「では、誰でも買えるようにすれば、もっと売れるのではないか」と思われるかもしれません。

ここ数年、実際にそういう売り方が広がっています。残価設定のクレジット、いわゆる「残クレ」です。

半額程度のローンで、高級車に乗れてしまう。

これまで手が届かなかった層が、お金持ちやラグジュアリーの仲間入りができるようになる仕組みです。

一見、お客様が本当に求めていたものに応えているようにも見えます。

ですが、ここで考えていただきたいのは、商売は数年で完結するものではない、ということです。

ルイ・ヴィトンが半額セールをしないのには理由があります。

安く売れば、その場では売上が立ちますが、利益は残らず、ブランドはしぼんでいきます。

そして何より、簡単に手に入るようになった瞬間、そのブランドの価値そのものが下がってしまうのです。

かつて高級車は、お金持ちや経営者だけが乗っている、いわばステータスの象徴でした。

ですが残クレによって、誰でも同じ車に乗れるようになった結果、5年、10年という単位で見ると、そのブランドの持つ価値は静かに下がっていきます。

買った方が不幸になるわけではありません。

ただ、そのブランドを長年守ってきた「価値」の方が、目先の販売のために少しずつ薄まっていくのです。

まとめると

どの業種であっても、お客様が本当に求めているもの、困っていることを解決する。

それが商売の核であり、そこを理解していれば売れます。これは間違いありません。

ただし同時に、その商売を長い目で見たときにどうなるかまで設計するのが、経営者の役目です。

目先の売りやすさに合わせて核の届け方を変えてしまうと、一度は売れても、築いてきた価値そのものを自分の手で削ってしまうことになりかねません。

一度、簡単な売り方を知ってしまうと、なかなか元には戻れません。

だからこそ、今売れるかどうかだけでなく、5年後、10年後にそのブランドがどう見られているかまで考えて、値付けや売り方を決める必要があります。

今回は、商売の核についてのお話でした。

現在、私はYoutube、Podcastにて番組を行っています。

そこでは、リスナーさんからの質問にお答えする形で少し泥臭い経営論を台本なしで展開しています。

よろしければそちらもご確認いただければ幸いです。

それでは次のコラムでお会いしましょう。

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